ラルフ・アリソン
医師は、患者の幸福、つまり治癒だけを第一に考えなければならない。従来のテクニックが失敗したら新しい方法を開発しなければならない。(略)
精神科医にとって「現実」は一つしかない、それは”患者の現実”である。
それ自体(魔術の真似事の経験)は高校生がよくやる馬鹿げた遊びの一つに過ぎない。しかしそのことは、彼女(キャリー)が”善と悪の概念”や、”神と悪魔”という概念を信じていることを示していた。だから、「悪魔祓い」のような宗教的方法が効き目があるかもしれないと思った。
患者たちは、ほんとうに「憑依」されていたのだろうか。わたしにはわからない。患者が治ったのは、間違った理論が、たまたま正しく働いた結果なのかもしれない。おそらくわたしは「霊」を祓っていたというより、交代人格に対する型破りな手法を「発見」したということなのかもしれない。現時点では、わたしは自分の経験を書き表わすことしかできない。
服部雄一
実在する人物が交代人格になる例は外国でも報告されている。こうした人格は虐待の加害者が多いといわれている。虐待を受ける子供は加害者に同一化して自分を守ろうとするからである。
体から出たがらない人格を無理に追い出すと「セラピストに殺される」と感じて暴力や復讐に訴える危険性がある。また、消えたと思っても体の中に隠れる人格も多い。著者はその危険を知っていたが、山田が自分から離れたいといったので、体から出す儀式をした。山田のケースが成功した理由は、著者の考えでは、山田自身が体から離れたいと希望したからである。
国際解離研究学会
「患者はある人格を悪魔だと見たり、自分の一部ではないと考える場合があるが、セラピストはエクソシズムの儀式には最大の注意を払うべきである。(中略)エクソシズムは患者によっては、自分の人格イメージを改善するのに役立つ場合もある。教育及びセラピストと聖職者の協力が患者の宗教的、精神的必要性を満たすのに役に立つ可能性もある。」