記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム
イアン ハッキング
早川書房
1998-04T



多重人格ノート再開しました。
だいぶ間が空きましたが、ちょうど概説的な本なので初めての人も忘れちゃった人もどうぞ。

今回は1章1章やっていく予定ですが、いきなり第1章で苦戦しているのでとりあえずさわりだけ。出来次第あげていくという感じで。


はじめに

原題は”REWRITING THE SOUL”で、直訳すると「魂を書きかえる」。
それがどうしてこういう邦題になったかというと、『記憶は絶えず書きかえられるものである』→『多重人格をめぐる議論では、事実上記憶が古来からの”魂”という概念の代用品の位置に置かれている』→『よって記憶を書きかえることは魂を書きかえることである』という著者の論を逆にたどったか、または単に「魂を書きかえる」という語感の過激さに日和ったのか。
とにかくそういう本です。

著者イアン・ハッキングは基本的に哲学者・物理学者で、いわゆる心理学・精神医学の専門家ではありません。その点多少理屈っぽいというか難解な傾向もありますが、未だにコントラヴァーシャル(論争的)でそれぞれの立場からの感情的な言及の多い多重人格という危ういジャンルの概説書としては、逆に良い距離感だなとも思います。1章1章丁寧に、なるべく”お勉強”にもなるように要約・抜粋していくつもりですので、よろしくお付き合いを。

なお著者の最終的な主張は
「記憶ごときが魂の代用品にはなり得ない、だから多重人格者たちよ、記憶の混乱など(そしてそれにこだわる医者の戯れ言など)気にせずに生きたいように生きなさい。大事なのは“本当の“自分ではなくそうありたい自分だ」
とまるで冒頭の前提を覆すようなもののように思います。
どうしてそうなるのか、僕も1回読んだだけでは良く分からなかったので(笑)、これからここでまとめながらじっくり考えていく予定です。

(目次)
1.それは本当か
2.それはどのようなものか?
3.運動
4.幼児虐待
5.ジェンダー
6.原因
7.測定
8.記憶の真実
9.分裂病
10.記憶以前
11.人格の二重化
12.最初の多重人格
13.トラウマ
14.記憶の科学
15.記憶政治学
16.心と身体
17.過去の不確定性
18.虚偽意識