信頼出来る精神科医に出会い、それまでひた隠しにしていた古都子の存在を周囲にも明らかにした藤家さん(と古都子)は、問題と正面から取り組み、徐々に回復に向かいます。 
その間、たまに私と古都子は頭の中で、頻繁に話し合いをした。信じられないかもしれないけど、私たちは円卓で向き会って、会議を開いたの。(中略)ポイントはお互いにとっていい結果。個々に独立したい思いがなかったことも、人格統合に近かった理由かもしれないわ。

こうして二十二歳のある日、私は突然我にかえりました。それは十何年ぶりの本来の「私」に戻った瞬間でした。ひどく妙な感覚でいっぱいだったのを覚えています。確かに生きてきたはずなのに、昨日まで何をしていたのか思い出せず、気がついたら二十二歳になっていたのです。
中学生になる少し以前から私の記憶はおぼろげになり、大学での生活を辛うじて覚えていることが出来た他は、私の中から失われてしまいました。

今の生活は私にとって二度目の人生だと思うわ。これを書いている時点で、私が「私」として生活を始めてから、まだ一年足らず。(中略)記憶がなくなったせいで一から知り合い直した人もいるわ。