ドナさんについては前にまとめて紹介してあるので、詳しくはそちらを参照。
わたしたちは、互いに似ていた。彼といると、自分も「普通だ」と感じることが出来た。
わたしたちは互いに何千キロも離れて住んでいるのに、「わたしたちの世界」の概念や戦略や経験は、まったく同じ解釈にまとまっていた。一緒にいると、わたしたち三人は、まるで絶滅しかけているひとつの種族のような気がした。
「普通」であること。つまり他にもメンバーがいる可能性がある、固有の秩序性・規則性(概念や戦略や経験)を元にしたカテゴリーの一部であること。その安心感。
ジムとわたしは、まったく同じシステムを使っているようだった。(中略)ジムの目を見つめ、ジムにも自分の目を見つめられると、いきなり殴られたようなショックを感じた。多分、普段私は世の中の人々のシステムと、世の中の人々のいう「普通であること」の中でもがいているから、人々が毎日互いに与え合っているインパクトは、感じる余裕がないのだろう。だがジムに対しては、即座に感じるのだ。
それからわたしは小石をひとつ拾うと、それで彼のまわりに円を描いた。今あなたはガラスの壁の向こうにいるのよ。わたしは声を出さずに言った。(中略)それから、もうひとまわり大きい石をいくつか拾った。「これは、明かり」わたしは大声で言うと、ひとつひとつ、彼のいる円のまわりに投げた。「あなたは闇の中にいるの」わたしは叫ぶ。「そしてあなたには、できるだけたくさん明かりが要るの」。